ガルパンをやっとちゃんと通して観た。ガルパンと言うのは言うまでも無く「ガールズ&パンツァー」である。
自分はJAMES(ジャパンアーマーモデリングエンスージエスツソサエティ)に入会し以前は戦車の同人誌を出していた戦車マニアである。なおかつ、アニメファンでも有り、女の子も大好きだ。しかし、ガルパンのブームには今ひとつ乗れず、ずっとスルーしていたのだ。
結果的には、ああ、なるほど。受けるのも分かるな。良く作ったな。と思った。しかし同時に、戦車ってのはこういう物では無いんだけどとも思った。
戦車の中は狭い。戦車は大きく見えるが、中には砲弾や燃料を目一杯搭載する必要上、人間用のスペースは身動きも不自由な狭さなのだ。ガルパンの戦車は家のようにでかい。主人公の乗る4号戦車は25トンだが、人物との対比を観ると70トンぐらいは有りそうに見える。
戦車の中は白い。世界各国、ほぼみんな白い。何故かと言うと戦車の中は暗いので、照明の効果を活かすため明るい白色に塗られるのが常なのだ。ガルパンの戦車の中は、何故か白く無いようだけど。
戦車は遅い。4号戦車は最高時速38キロ。路外は16キロしか出ない。坂道ならもっと遅い。巨大なダンゴムシの如く鈍足なのだ。ガルパンの戦車は快速で、KV2が易々とT34と共に雪上を移動し、どの戦車も時速80キロぐらいでかっ飛ばす。不整地を、である。すごいな。
戦車は運用が大変だ。一両の戦車を動かすのに補給や整備のための部隊も必要になる。一時間くらい走ったら停車し点検、調整、グリスアップ、必要に応じて補給。それを地道に繰り返す。例えばティーガーに燃料を補給するだけで一時間かかる。ガルパンでは整備や補給の大変さはほとんど描かれていなかったけど。
戦車戦は過酷である。戦場の華である戦車を戦場では様々な脅威が待ち受ける。地雷、対戦車壕、対戦車障害物(ピアノ線やコンクリートブロック、鉄骨の塊等々)対戦車砲、そして敵戦車。主砲射撃時にはベンチレーターで換気するが、発射ガスは有毒なものも多い。旧帝国陸軍の一式砲戦車はオープントップの対戦車自走砲だが、射撃時のガスで乗員は鼻血を流し昏倒したらしい。砲は強力だったのだが。ガルパンでは砲こそ撃ち合うものの、当たり判定が出ると白旗が出るギミックが有り、殺し合いの凄惨さは皆無である。実際は着弾すると装甲を貫通しなくても、装甲の内側が吹き飛ばされて車内を跳ね回ったりする。勿論装甲を貫徹されればほぼ全滅である。
本来凄惨な戦車戦を、ゲーム感覚でイージーに描いたのはなかなか良い着想だと思った。ただ、ガルパンでも一応砲弾は発射している。もう少し踏み込んで、発射はするけど模擬弾で、当たり判定を出すための装置であり、危険は無いと言う設定が有れば尚良かったと思う。
まあなかなか楽しかった。同時に、リアルな戦車戦をアニメで描く事は、不可能なんだろうなとも思った。このアニメのおかげで、戦車の模型業界はかなり助かったと聞いている。他人事だが、有りがたい事である。