サラトガ本線というのは鉄道であるが、今回話題にしているのは映画の方なのだ。
1944年のアメリカ映画。主演はイングリッド・バーグマンにゲイリー・クーパー。監督はサム・ウッド。彼等は1943年、映画史に残る名作「誰がために鐘は鳴る」をものにしたドリームチームである。
しかし、誰でも知っている「誰がために鐘は鳴る」に較べると「サラトガ本線」なんてほぼ無名に近い。ゲイリー・クーパーのファンである自分もタイトルは知っていたが観た事は無かった。
最近、版権の切れた昔の映画がDVD10枚組1800円とかの廉価で売り出されており、「ゲーリー・クーパー究極の名作集」の中に入っていたのである。
この作品集の売りは「真珠の頚飾」と「市街」のようである。「真珠の頚飾」は大好きな映画で、大いに楽しませてもらったが、「サラトガ本線」がこんなに自分のツボにはまるとは予想外だった。
貴族の血を引きながら残念な身の上の若い女性がイングリッドの役どころである。強気で才気煥発だけど隙だらせけの愛すべき御嬢様(自称伯爵夫人)をひたすら美しく演じている。イングリッドの魅力を堪能するのを目的とするなら、本作はベストかも知れない。
クープはテキサスの荒くれ男をジェントルに演じており、いかにも彼らしい。
何よりも、悲劇で終わった「誰がために鐘は鳴る」の二人が別の出会い方をしたら、こんなに楽しいハッピーエンドな作品になりましたと言うのが嬉しい。
ただ、主人公の使用人の女性が明らかに「黒塗り」であったり、株価操作の為に資本家が大勢の男達を雇って暴力行為をしたりなど、現代の価値観では問題の有る描写も何箇所か見受けられる。やはりこの作品は大多数の人々には知られる事無く消えていく運命なのかも知れない。
でも、消える前に自分に大きな印象を残した事は記しておきたい。自分にとっては大変に楽しめる作品なのだから。
これ以外では、最近廉価で出たチャック・ノリスの4枚組が楽しかった。チャック・ノリスは素晴らしいな。いやあ、映画って、本当に良いもんですね。