知人の舞台を観に行った。演目は、銀河鉄道の夜。言わずと知れた、宮沢賢治の代表作である。原作を活かしつつ、ミュージカル風にまとめた秀作だった。
自分は花巻に住んでいた事があるので、宮沢賢治には、特別の思い入れがある。
今回、いい歳になって改めて宮沢賢治作品に触れて、何やら腑に落ちた感があったので記しておく。
宮沢賢治の作品は、不思議な透明感と切なさを感じさせるとともに、侵しがたい格調の高さがある。この魅力と本質に、今までの自分は気付かずにいたように思う。
これはネタバレという訳では無く自分がたどり着いた解釈なのだが、宮沢賢治作品は基本的にレクイエムなのだと思う。岩手県は、都会では考えられないようなアニミズム、シャーマニズム的な感性がまだ残っている地である。昔は、死んで行く子供達も多かっただろう。死にゆく子供達に、周りの者達は為す術も無い。ただひとつ出来る事は、死にゆく子供達、死んで行った子供達に、愛情を注ぐ事だけである。
宮沢賢治作品には、一貫して、弱き者、死にゆく者達への共感と愛がある。
岩手の厳しい自然の中で、精一杯生きて力尽き、死んで行った子供達。彼らは、彼らを思う人達が居る限り、永遠の命を持つのだ。